東山魁夷の長い画歴の中でも唐招提寺御影堂の障壁画は、作品としての完成度はもとより、制作に費やした年月、大きさから言っても、最大の代表作であることは間違いないでしょう。このような大作を、さすがの東山も一度に仕上げることはせず、二期に分けて制作しました。第一期は南側に位置する宸殿の間に《濤声》を、上段の間に《山雲》を描き1975年に完成。第二期は北側の桜の間、松の間、梅の間の3間にそれぞれ《黄山暁雲》《揚州薫風》《桂林月宵》を描いて1980年に奉納しました。そして、松の間に据えられた鑑真和上像を納める厨子の扉絵を1981年に納めて、全体を完成させています。1970年に制作を依頼され、1971年にその依頼を正式に受諾してから、障壁画の完成まで実に10年。厨子扉絵まで含めるとあしかけ11年となります。
※本展では厨子扉絵の本画は展示されませんが、試作の展示があります。